ジャック・タチの「ぼくの伯父さん」のDVDを見返しました。
パントマイム芸人出身のタチは、ヨレヨレの帽子に丈の短いコート、
パイプをくわえて前のめりに歩くユロ氏という
映画史に残るキャラクターを生み出しました。
ノスタルジックで軽快な音楽、映像と音のずれによって生み出されるオフビート感。
タチのセンスはクールで新しく、その世界観はヌーベルバーグの映画のみならず、
建築、インテリア、美術、音楽、サブカルチャーに大きな影響を与えてきました。
この作品を見ていると、どうしても笑いの要素のほうに目を奪われがちでありますが、根底には、チャップリンの「モダンタイムス」やフィリッツ・ラングの「メトロポリス」などが投げかけた共通のテーマを感じます。
下町と超モダンな高級住宅地、対立する二つの価値感、行き過ぎた機械化や経済合理性の追求によって失われていくもの、私たちが今回の原発事故でも痛感したものです。
2011年7月16日