世田谷美術館で開催中の「アイノとアルヴァ 二人のアアルト」展では、これまで着目される機会が少なかったアイノの仕事にもフォーカスされています。
建築の内装と家具や照明を共にデザインする包括的な手法はアアルト夫妻の設計の本質ですが、アイノの「暮らしを大切にする」という視点が、"使いやすさ"や"心地よさ"をモチーフに付していきます。
その後、合理性の概念は心理や生理学的領域にまで拡張され、パイミオのサナトリウム(1933)やヴィープリの図書館(1934)でその実践と成果を見ることができます。1940年の「建築を人間的なものにする」と題されたアルヴァの論考で、スチールやクロームという素材は技術的、製造的には合理的ではあるが、人間という視点からすると、熱を伝えやすい、光や音を反射するといった理由で室内での使用は不適であると断言しています。以降、家具やインテリア製作では専ら木質化が追究されていきます。
アイノのデザインで最も有名なのは「Bölgeblick」(スエーデン語で水の波紋の意)というガラス器で少し幅広の段を重ねたデザイン。光を反射して美しく、子供でも手が滑りにくく、重ねて収納する場合も安定感があります。
夫妻でデザインした「Aalto Flower」というテーブルウエアは皿、二つのボウル、花瓶で構成されており、重ねるとまさに可憐な花のように見える美しいデザイン。
その他、遺族のもとで保管されてきた貴重な資料も拝見できました。