札幌のモエレ沼公園、美唄のアルテピアッツア。2つのスカルプチャー・ガーデンを訪ねました。
モエレ沼公園は大通公園から北東に8km。現代彫刻の巨人、イサム・ノグチが最後に残した大地のレリーフです。1988年に急逝したノグチの遺志を継いで2005年7月に完成しました。
高さ62mのモエレ山は10分弱で登ることが出来る低い山ですが、稜線を歩く人があっという間に小さくなります。砂漠や遺跡とは一味違う不思議な大地のスケールを体感できます。
イサム・ノグチには、NYのセントラルパークのプレイマウンテン(1933)、国際連合のための遊び場(1952)、建築家ルイス・カーンと協働したリバーサイド・ドライブ・パーク・プレイグラウンド(1961-1966)など、未完に終わった子供の遊び場の構想がありました。夏はすべり台に水を流し、冬はソリを滑らせる子供たちが遊ぶ夢の彫刻。水があれば楽しいし、山があれば楽しい。そのアイデアがモエレ沼公園に生かされています。
木々に囲まれた道を進むとサクラの森があります。背丈90cmの子供の目線でつくられた遊びの彫刻・遊具のエリアです。
1992年大通公園に設置されたイサム・ノグチの遊べる彫刻「ブラック・スライド・マントラ」。この作品の源形は1986年のベネツィア・ビエンナーレに出品された白大理石の「スライド・マントラ」。その製作に携ったピエトラサンタのジョルジョ・アンジェリ工房の石職人のなかに彫刻家・安田侃の姿がありました。
アルテピアッツア美唄はかつて、炭鉱で栄えた美唄の山里の廃校を同市出身の安田侃の彫刻ガーデンとして再生されたプロジェクトです。彫刻は人間の手で触れ、よじ登り、全身で体験させるべきもの、という考え方はイサム・ノグチの思想に通じるものがあります。
突出する形態は有機的な生命の流れる線であり、抉られた窪みは暗く深く、闇の淵ののようです。